【概 要】 |
岩渕山と感応山は佐伯区湯来町の里山で国土地理院地形図では無名峰ですが、麓から望む山体は厳しい岩峰の姿を見せています。山麓には広島藩主の湯治場だった湯の山温泉があり、国重要有形民俗文化財に指定されている「湯ノ山明神旧湯治場」があります。
山歩きとしては西側の石ヶ谷峡から登って岩渕山と感応山を踏んで湯の山温泉に下る登山路が隠れた人気コースですが、厳しい岩稜歩きのため一般向きではありません。
感応山は南画を想わす岩峰で先端部が断崖絶壁でそれなりの高度感が得られます。山頂からは深い谷底に水内川、前面には東郷山、阿弥陀山などが墨絵のように広がります。
岩渕山は岡岷山(広島藩士で絵師)の「都志見往来諸勝図」にも描かれていますが山頂としての魅力に欠けるらしく、一般の山歩きでは手前の700m台ピークが「ニセ岩渕山」と称されハイキング対象となるようです。狭いピークからはより高い位置からの東郷山、阿弥陀山、大峯山などを望むことができます。
今回は湯の山温泉側から感応山とにせ岩渕山を往復登山しました。感応山までは遊歩道として整備されているものの、ニセ岩渕山へは深いササの茂る急登を強いられました。
○湯の山温泉9:23〜スポーツセンター分岐10:24
大橋バス停で下車し国道433号を13分ほど歩くと「クアハウス湯の山入口」と「湯の山温泉」の大きな案内板が立つ温泉の入口です。赤い欄干の
湯の山橋を渡ると湯之山観音のお堂があり、橋から10分あまりで広島藩主浅野公湯治場と「うたせの湯湯元」の案内を見ると温泉地に入りました。
入湯者の姿が見られる温泉宿の間を進むと湯之山大明神の石柱と石鳥居が立っていました。石段を登ると左に湯之山温泉館、正面階段の奥に赤い鳥居と拝殿、鳥居前の右に休憩東屋が見えています。感応山へは@拝殿の脇から湯之山明神社を経て登るA温泉館前から湯の山公園経て登るの二ルートがありますが今回は湯之山明神社側から登りました。
石段を登ると1750年(寛延3年)に創建された「国の重要有形民俗文化財 広島県史跡」の説明板が置かれた拝殿で、拝殿前から「遊歩道→」の案内に従って登ると
湯ノ山明神本殿です。本殿の梁中央には鯉の滝登りが彫刻されていますが、この鯉が縁で近年カープの新入団選手たちが参拝するようになりました。
参拝を終えて感応山へ向かうとすぐ「大道無門乾坤独歩」と掲げられた
弘法大師祠があり、左から温泉館からの登山道が合流します。
道は石段が多いジグザグの急坂になり要所に現れる木段も朽ちかけています。
祠から17分ほどで左に下山に利用したスポーツセンターへの道が分岐します。
○スポーツセンター分岐10:24〜感応山10:53
分岐を過ぎると谷の向こうに南画を思わす感応山の断崖が木の間に見え隠れしだします。
分岐から5分も進むと案内はありませんが右手に草の被る
展望台への道が登っているので寄り道しました。ベンチのある展望台は木立が茂り展望は決して良いとはいえませんが「砥石か嶽」といわれる断崖を見ることができました。
ジグザグの道を登り前方が明るくなると尾根道に合流しました。感応山と岩渕山の
分岐点で、「←2分 510m感応山・733 岩渕山25分→」と書かれた手書きの案内プレートがあり左に感応山への道が延びています。
痩せ尾根を進み右手に「ウスヶ重」、左手に「砥石か嶽」の断崖が見えるとすぐ感応山に到着しました。
○感応山11:05〜ニセ岩渕山11:50
ベンチが一基置かれた感応山は小高い岩山で、突き出た先端部は断崖絶壁となりかなりの高度感が得られます。眼下に水内川、前方には逆光の中に東郷山、阿弥陀山などが墨絵のように広がっています。
展望を楽しんだ後は岩渕山へ向かうため分岐まで戻ります。分岐の先は完全な山道となり指導標類は見られません。
色づいた雑木林中のササが被る道は思いの外に厳しい急登、直登です。感応山から約20分の標高600m台まで登ると一旦傾斜が緩み、右前方に700mピークの「にせ岩渕山」が木の間越しに見えてきました。
道が再び急になるとササが一層うるさくなり草丈も増してきますが、道そのものはよく踏まれており気持ちの良い山歩きが楽しめます。
登路ではほとんど見かけなかった岩が現れ、その間を抜けると突然のように前方が明るくなりました。道は左に90度曲がり岩渕山へと延びていますが、そのまま一息に登ると目的の「ニセ岩渕山
」です。
○ニセ岩渕山12:35〜〜湯来町スポーツセンター分岐13:33
山頂には「ニセ岩渕山
」や「←展望台(行き止まり)・↓岩ブチ・感応山、湯の山→」などのプレートが架かっています。
山頂は小スペースですが南側が開け感応山から200mほど高い位置からの展望は素晴らしく、眼下に感応山そして水内川を挟んで立ち塞がるような急峻な東郷山、阿弥陀山、大峯山などが連なっています。北側は立木が茂りますが木の間越しに天上山らしき山体が見えています。
下山は往路をたどります。ササの茂る道は落ち葉と散乱する小枝に足を取られやすく、補助ロープも無く立木の助けを借りての下りとなりますが急速に高度を下げていきます。
40分足らずで感応山分岐に帰り着きました。
感応山分岐から往路をたどると約20分で湯来町スポーツセンターへの分岐です。
○湯来町スポーツセンター分岐13:33〜登山口13:56
スポーツセンターへ分岐の先は遊歩道となっているため傾斜も緩み木階段なども見られて歩きやすくなりました。
分岐から10分足らずで水量の少ない沢に出て徒渉し対岸に渡ります。
沢の中の判然としない道から少し上り気味に進むと尾根に乗りました。快適な尾根道を下り右にUターンすると斎場の駐車場に出ました。
出たところには「ハイキングコース→」の道標が立っています。
斎場からは舗装路を下ります。少し先に直進が湯の山橋、右がスポーツセンターへの指導標がありましたがスポーツセンターへの道は判然としない状態でした。
岩渕川沿いに下りASAGIRIと書かれた工房の前を過ぎると赤い欄干の湯の山橋に出ました。
湯の山橋からは往路をたどり湯来大橋バス停まで歩きます。
広島里山紀行記