広島市安佐北区可部の高松山（339m）は四等三角点の里山ですが低山ながら中世の高松城趾だけに急峻です。東西に細長い本丸跡からは箱庭のように広がる可部の町並みが一望です。北方向は生長した樹木に遮られますが、西方向に福王寺山、水越山、さらに東郷山、窓ヶ山などが、南方向には阿武山、二ケ城山などの山々が展望できます。
　今回は尾根道コースで与助丸を経て山頂に至り、桐原（とげ）ルートと上原ルートの分岐から桐原ルートで182mピークを経て三入の登山口に下山しました。三入へのルートは鉄塔から北は悪路でルートも不明確なため利用しない方が無難です。鉄塔から東に下る通常ルートをお薦めします。

○登山口9:39〜与助丸10:28
　JR可部駅から「花の散歩道」とある民家の小路を抜け、宿場町の雰囲気を残す街中から根の谷川の土手に出ました。高松橋を渡って左折した駐車地に「高松山登山道入口→」の大きな案内板と「高松城趾登山口」の石柱がありここが登山口となります。
　白い手すり沿いに登るとすぐ2014年8月の土砂災害によって大きな被害を受けた墓地です。最上段には合同塚があり「あと1粁」のプレートを見て大鳥居を潜りました。左手の砂防ダムをみて道なりに進むと8分ほどで登山道への取り付きです。とくに案内類はありませんが赤いリボンが見えました。登ると「登山道はこちらから」の表示があり、登山道は石垣や用水路跡の傍を進みます。
　鳥居から12分ほどで分岐です。直進は「この先登山危険」、右は「高松山尾根道→」の案内がありました。右に進むと支尾根に乗り雑木林帯の中を急登します。城趾らしくなかなか急峻でジグザグを切って登ります。10分ほどで一旦緩むので一息つけました。この先は露岩が目立つ急登ですがコシダが現れると砂礫状の滑りやすい道となりました。　
　登った先は明るく開けた裸地で「高松山尾根道→」の案内から約20分でした。裸地は展望地で正面に堂々とした山容の阿武山が見え、眼下には蛇行する太田川と可部の街が広がり、その先には広島市街地から阿武山、螺山、水越山などが望めます。
　展望地から先は急登から解放されしばらくは快適な道となりました。14分ほどで「←与助丸・山道、標高250m」のプレートと「←��松山」のテープのある郭跡です。この郭跡からは再び急登しますが、数カ所の郭跡を過ぎると「与助丸　←山頂・可部方面→」と城趾の配置図が掛かる与助丸に着きました。

○与助丸10:28〜高松山10:53
　郭跡の与助丸は今の時期でもコナラの落ち葉を一面に敷き詰めた状態でした。与助丸からも急登が続き5分ほどで馬場跡の広場に出ました。来た方向には「東側脈下山道方面へ→」と「下りは右側→」の案内プレートがあります。馬場跡には石組みの井戸が原形を良く留めています。馬場跡からは山頂を巻く形で穏やかに進むと4分ほどで山頂への近道が分岐しています。
　分岐を直進すると三の丸跡に建っている高松神社の横に出ました。神社は京都の愛宕山から火の守り神として分祠されたようで5月大文字焼きの舞台となっています。高松神社横には「高松山頂上付近略図」があり標高250m以上は国有林と説明されていました。また「馬場・井戸・二の丸方面→」、「←与助丸跡へ」のプレートもありました。
　高松神社からは城趾に相応しい急登の連続となります。神社から「山頂近し約50米」のプレートを見て、岩の散在する登路を急登すると2分で甲丸跡、続いて2分で二の丸跡、さらに急登2分で山頂到着です。

○高松山11:46〜桐原分岐12:20
　四等三角点が置かれた山頂は東西に細長い本丸跡で「高松城跡」の石柱と高松城の由来解説板「熊谷氏の遺跡　高松城趾」が建っています。眼下には出雲街道と石見街道が合わさる交通の要所、そして太田川水運中継地の宿場町として栄えた可部の街が望めます。
　展望は成長した樹木で以前ほど良くはありません。北方向は備前坊山方面がわずかに開ける程度で、南方向には蛇行する太田川と広島市街が広がりその先には能美島など瀬戸内海の島々を望めます。
　下山は北側の桐原（とげ）方向に向かいました。本丸跡の東端から左手に下ると「鐘の段→」、「桐原におりる道です→」のプレートが架かっていました。下った深い堀切の右手には敵襲来を知らせる梵鐘があったと云う「鐘の段跡」があります。
　堀切の左手から郭跡を抜け急な道を降ります。5分ほどで左が「下山道　土居屋敷跡」、右が「下山道　上原水道施設、桐原へ」の分岐に出ました。土居屋敷跡への下山口からは急な道が下っていました。右の桐原方面へ下りますがこちらも急降下です。8分で「谷の坊」の郭跡の平坦地に出ました。
　さらに急坂を下り複数の堀切跡を越えると郭跡でしょうか広い平坦地に出ました。ここには「←桐原へ・上原へ→」の案内の他に「←谷の坊」のプレートとFポイントのテープ（『広島市の山を歩く』）があります。

○桐原分岐12:24〜三入登山口13:26
　前回は上原へ下りましたので今回は未知の桐原へのルートを採りました。北方向へ深い雑木林の中を明確な道が穏やかに下っていきますが、ほどなく急降下する道へ変わりました。分岐から10分足らずで鞍部に至って登り返します。多少倒木なども見られますが、落ち葉も堆積し足にも優しい概して歩きやすい道が続きます。10分ほどで植林帯の下りとなりほどなく送電鉄塔に出ました。鉄塔のプレートによれば一帯は国有林のようです。
　鉄塔は辺りが開けて正面に182mピークがそそり立つ感じです。西側は可部市街方面が開けて可部冠山が顔を覗かせ、東側は白木山山系が連なり鬼ヶ城山も望めます。通常ルートは鉄塔から東側に下っていますが見つけ出せませんでした。地図を頼りに182mピークを越えて桐原に下ります。
　今回のルートで歩きやすかったのは鉄塔まででした。182mピークに取りかかると間伐の廃材が散在し荒れています。地面に放置された古テープでわずかに先人のルート利用が確認できました。たどり着いた182mピークは小径のヒノキ材と間伐材が散乱し展望も無い殺伐とした雰囲気でした。
　下山路はテープ類も見当たらず明確ではありませんがそれらしき跡をたどります。その先は小径雑木林の中の滑りやすい急斜面を転がるごとく下ります。20分ほどの苦戦の後にようやく前面が明るくなってきました。
　前面を遮るフェンスの先に集落が広がっています。フェンスの切れ目から下ると三入南の車道に出ました。降りた所には国有林界の杭が立っていました。狭い車道を7分ほどで下桐原バス停に着きましたが便数が少なく利用できません。さらに6分ほど歩いて根の谷川の三入橋を渡るとすぐ183号の下町屋バス停です。ほどなく到着のバス便でJR可部駅に向かいました。
　                                                     広島里山紀行記